住環境とリスク

停電になった瞬間、ホームセキュリティは止まるのか? バックアップ電源の限界点

yhongo
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もし今夜、停電になったとき、
あなたの「安全」は何時間もつか
知っていますか

深夜2時。

台風が直撃し、突然停電した。部屋の電気が落ち、エアコンが止まる。冷蔵庫の低いモーター音も消えた。

ひとり暮らしの自宅。玄関の窓センサー、ドアセンサー、室内の人感センサー——これらはすべて「ホームセキュリティのシステムで守られている」という認識があった。

しかし、真っ暗な室内でふと思う。

「停電になって、このシステムはまだ動いているのだろうか。」

スマートフォンでセキュリティアプリを開こうとする。Wi-Fiルーターのランプが消えている。ネット接続が切れている。アプリが「接続できません」と表示する。

「今この瞬間、自分は守られているのか、いないのか——わからない。」

その「わからない」が、最も危険な状態だ。

「バッテリーは存在する。しかし、いつ切れるかは誰も知らない」という構造的事実

ホームセキュリティに関して、最もよく誤解される事実がある。

「停電になってもシステムは動く」——これは本当だ。しかし「いつまで動くか」は別の話だ。

ホームセキュリティの主要機器には、内蔵バッテリーが搭載されている。停電と同時にシステムが落ちるわけではない。電池式のセンサーは停電の影響を受けない。ホームコントローラー(制御盤)は内蔵バッテリーに切り替わり、数時間の動作を維持する。

しかしここに、見落とされがちな「3つの限界点」がある。

① バッテリーの動作時間は「数時間」だが、大規模災害の停電は「数日」続くことがある

能登半島地震(2024年1月)では、最大約4万戸の停電が発生し、道路の損壊により復旧に長期間を要した。2018年の北海道胆振東部地震では、ブラックアウト(全域停電)が約11時間続いた地域もあった。「数時間持つバッテリー」は、これらの状況に対して十分ではない。

参考

経済産業省「令和6年能登半島地震の対応について」 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/pdf/020_01_01.pdf

参考

資源エネルギー庁「日本初の”ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html

② バッテリーは経年劣化する——しかし誰も容量を知らない

内蔵バッテリーは消耗品だ。新品時には「数時間」持つとされるバッテリーも、経年劣化により「1時間も持たない」ケースがある。バッテリーの現在の容量を、契約者が日常的に把握できるシステムになっているかどうかは、システムによって異なる。

③ 「通信回線」の問題が、バッテリーとは独立して存在する

システム本体のバッテリーが生きていても、家庭用インターネット回線(光ルーター)が停電で止まっていれば、警備センターへの通信が途絶する。バッテリーで動くセンサーが異常を検知しても、その信号が届かない——という状況が発生しうる。

「バッテリーがある」と「守られている」の間には、複数の断絶がある。

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時間軸の解剖:停電発生から「守られていない時間」が始まるまで

⏱ 0〜10秒(検知):停電の瞬間、何が止まり何が続くか

停電発生0秒。物理的に何が起きているか。

止まるもの:

  • 照明・家電・Wi-Fiルーター・光回線終端装置(ONU)
  • インターネット接続(→スマホアプリが接続不可になる)
  • 家庭用電源に依存したセキュリティ機器の外部電源供給

続くもの(バッテリー駆動):

  • 電池式のセンサー(開閉センサー・人感センサー)
  • ホームコントローラーの内蔵バッテリー(数時間分)
  • 専用無線回線を持つシステムは、この通信も維持される

この「止まるもの」と「続くもの」の境界を知っていることが、平時の準備の出発点だ。

セコムは公式に「セコム・ホームセキュリティNEO」において、お客さまの電話回線・インターネット回線を使用しなくてもご利用いただけることを明示している。これは「家庭用インターネット回線が停電で死んでも、専用無線回線で通信を維持する」設計があることを意味する。

参考

セコム「ホームセキュリティの通信回線についてよくあるご質問」 https://www.secom.co.jp/homesecurity/support/faq/kaisen.html

一方、家庭用インターネット回線に依存したシステムは、この瞬間から通信が途絶する。センサーは動いていても、信号が届かない。

⏱ 10秒〜30分(空白):「守られている感覚」と「実際の状態」の乖離

停電から10分後。

バッテリーに切り替わったシステムは動いている。センサーも反応している。しかし——スマートフォンのアプリは「接続できません」を示している。これが意味するのは何か。

「アプリが繋がらない」ことは、「センサーが動いていない」ことではない。しかし「警備センターへの通信が届いているか」は確認できない。

この「わからない」状態が、最も危険な空白だ。

実際のシステム挙動として、バッテリーが切れた時点で警備センターへ「電源落ち」の信号が送出され、センターが対応を開始するという仕組みがある(外出警備中の場合は警備員が即時急行する)。しかし、これは「バッテリーが切れてから」の話だ。

日本蘇生協議会(JRC)のガイドラインが示すように、緊急事態では初動の速度が決定的だ。バッテリーが切れるまで「何も起きていない」と判断されている時間が、最も危険な空白になりうる。

参考

日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2020」 https://www.jrc-cpr.org/jrc-guideline-2020/

⏱ 30分〜24時間(結末):「バッテリーが切れた後」に何が起きるか

停電から5時間後。内蔵バッテリーが切れた。

センサーは止まった。ホームコントローラーも電源を失った。

この瞬間から、あなたの自宅のセキュリティは「物理的に何も動いていない状態」になる。

しかし同時に、警備センターへ「電源落ち」の信号が届く。センターはこれを異常として受け取り、対応を開始する。在宅中・解除中の場合は登録電話番号に連絡、外出警備中の場合は警備員を直ちに急行させる。

この設計が機能するためには、「電源落ちの信号が届く回線」が生きていることが前提だ。専用無線回線を持つシステムは、自宅のインターネット回線が死んでいても、この信号を送れる。

総務省消防庁のデータによれば、救急車の全国平均到着時間は約10.0分(令和6年版)だ。しかし大規模停電が続く中では、この到着時間も変わりうる。

参考

総務省消防庁「令和5年版 救急救助の現況」 https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/post-5.html

「バッテリーが切れた後の設計」まで含めて初めて、停電対応が完結する。

なぜ「検知」できないのか

停電後に「守られていない」状態が生まれる理由を整理する。

① バッテリー容量の経年劣化 内蔵バッテリーは消耗品だ。導入時には「数時間」持つとされていても、3〜5年が経過した機器では、容量が大幅に低下している可能性がある。停電が発生して初めて「1時間しか持たなかった」と気づく——これが最も危険なパターンだ。定期メンテナンスで早めにバッテリーを交換しておくことが、唯一の対策だ。

② 「回線の死」がバッテリーとは独立して発生する 電池式センサーは動いている。コントローラーのバッテリーも動いている。しかし——自宅のインターネット回線(光ルーター)が停電で止まれば、その回線経由での通信は途絶する。「センサーが動いている」ことと「通報が届く」ことは、別の設計要件だ。

③ 「計画外の長時間停電」への設計的準備不足 多くのバックアップバッテリーは、短時間(数時間)の停電を想定した設計だ。大規模災害による長時間停電(数日)には対応できない設計になっている。「平時を想定した設計」が、「有事の極限」で限界を迎える。

④ ユーザーが「今の状態」を知る手段がない Wi-Fiが止まれば、スマートフォンアプリも繋がらない。「今、システムは動いているのか、いないのか」を確認する手段が、停電中にはない。不確実性の中に置かれた状態が、最大の「検知不全」だ。

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なぜ「介入」できないのか

システムが機能しない状況が続いた場合、介入の連鎖が起きない理由がある。

「電源落ちの信号」が届く回線が死んでいれば、センターは知らない バッテリーが切れたとき、警備センターへの「電源落ち信号」が届くためには、何らかの通信回線が生きていなければならない。家庭用インターネット回線が停電で止まり、専用無線回線も持っていないシステムは、この信号を送れない。センターは「何も起きていない」という状態のまま時間が経過する。

「外出警備中でない」状態では、警備員の即時急行が起きない セコムの設計では、外出警備中の場合はバッテリー切れで警備員が即時急行するが、在宅・解除中の場合は電話確認から始まる。自宅にいながら室内で倒れているケースでは、「在宅中」という判定により、即時急行ではなく電話確認になる可能性がある。電話に出られなければ、その後のプロセスが始まる。

道路状況が介入を妨げる 大規模停電が大規模災害と同時に発生している場合、道路の損壊・渋滞により警備員の移動自体が遅れる。「通報が届いた後、25分以内に到着」という警備業法の基準も、道路が機能しない状況では成立しない。

【生存のための物理構造図】

「バッテリーに依存する」から「停電の深刻度に応じた多層設計」へ。

【検知】

  • 電池式センサー(停電の影響ゼロ)が「開閉・振動・熱・人感」の異常を検知し続ける
  • コントローラーの内蔵バッテリーが数時間の動作を維持する

【判断】

  • 専用無線回線で警備センターへ通信
  • 「家庭用インターネット回線の生死」に依存しない独立した通信経路が動き続ける
  • バッテリー低下も「異常信号」としてセンターに自動送信される

【通報】

  • バッテリー切れ → センター即時検知
  • 在宅警備中・解除中:登録電話番号に連絡
  • 外出警備中:警備員を即時急行
  • 「電源が落ちること」自体が通報のトリガーになる

【介入】

  • 鍵と情報を持った警備員が現場に到達
  • 停電中でも独立回線で連絡が取れる体制
  • 定期メンテナンスでバッテリーを常に最良状態に保ち、「有事の数時間」を確実に守り切る
「バッテリーがある」は出発点だ。「バッテリーが切れた後も設計がある」が完成形だ。

停電時のホームセキュリティの挙動は、大きく3段階に分かれる。

①停電直後——バッテリー稼働でシステムは正常
②バッテリー切れ——電源落ち信号でセンターが把握し対応開始
③長期停電——この時間をどれだけ設計的に埋めるかが、システムの本質的な差だ

設計を、今日から始める

「バッテリーの限界」を延長する—今日から置ける2つの選択肢

警備会社との本格契約が最も確実な設計だ。しかしその設計にも「内蔵バッテリーの限界時間」という物理的な制約がある。今日からできる補完は2つだ。「外部電源でバッテリーの限界を延長する」ことと「停電でも電池で動き続けるセンサーを追加する」こと——この2点が、この記事が示した限界への現実的な第一歩になる。

補完① ホームセキュリティのバッテリー限界を外部電源で延長する

Jackery ポータブル電源

この記事が示した「内蔵バッテリーは数時間しか持たない」という限界に対する最も直接的な補完が、外部のポータブル電源だ。ホームセキュリティのコントローラーとWi-Fiルーターにポータブル電源を接続しておくことで、停電が長引いても「内蔵バッテリーを温存しながら動作を継続する」という設計が成立する。能登半島地震のような長期停電に対して、内蔵バッテリーだけでは数時間しか持たないが、ポータブル電源を加えることでその時間を大幅に延ばせる。

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Amazonで今日から / 定番ポータブル電源

Jackery ポータブル電源 240 New(256Wh)

Wi-Fiルーター(消費電力約10〜15W)を約10時間以上給電できる容量。ホームセキュリティのコントローラー(消費電力機種により異なる)との同時給電も可能。「内蔵バッテリーが切れるまでの数時間」を「外部電源が支える十数時間」に変える。長期停電が想定される地域への備えとして有効だ。

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※ホームセキュリティのコントローラーへの外部電源接続は機種により異なります。接続可否は契約している警備会社にご確認ください。

補完② 停電でも動き続ける「電池式センサー」を追加する

MANOMA(マノマ)セキュリティセット / SwitchBot 開閉センサー

この記事が示したように、電池式センサーは「停電の影響ゼロ」で動作し続ける。現在のシステムのバッテリーが切れた後でも、電池で動くセンサーが窓・ドアの開閉を検知し続ける設計がある。MANOMAの開閉センサーはゲートウェイ(ハブ)込みのセットで、Wi-Fiルーターが止まっても独立して機能する設計になっている。既存のホームセキュリティを「補完するレイヤー」として位置づけることができる。

※SwitchBot開閉センサー単体でのスマートフォン通知にはハブ(別売・約5,500円)が必要です。停電時はハブへの給電もポータブル電源で維持することでセット機能します。

※本ブロックで紹介しているのは「警備会社契約の内蔵バッテリーを補完する今日できる第一歩」として選定した製品・サービスです。専用無線回線・定期メンテナンスによるバッテリー管理・警備員急行という警備会社との本格契約が、最も確実な設計であることに変わりはありません。

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「守られている」と「守られるように設計されている」の違いを知る

停電になった瞬間、スマートフォンのアプリが繋がらなくなる。その瞬間、「守られていないのではないか」という不安が生まれる。

この不安に対する答えは「システムによって異なる」だ。

専用無線回線を持ち、バッテリー管理を自動で行い、電源落ちを即座にセンターへ通知する設計のシステムは、「停電になっても守られるように設計されている」。

家庭用インターネット回線に依存し、バッテリー管理がユーザー任せで、電源落ちの通知手段が不明なシステムは、停電になった瞬間から「守られているかどうか、わからない」状態に入る。

「わからない」という状態は、守られていない状態と事実上、同じだ。

停電は選べない。しかし「停電になったとき何が起きるか」を理解した上でシステムを選ぶことは、今日できる。

この記事を読んで「停電時のセキュリティ設計が気になった方へ」

このサイト(guard-structure)は、住環境の「物理的な構造」とリスクの関係を整理することを目的にしています。「構造の盲点」を言語化することが出発点です。この先起こり得る災害やトラブル、また有事における「安全意識」の重要性は増し続けています。

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停電になっても止まらない設計——バックアップの「その先」を考える

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参考資料・出典一覧

資料名発行元URL
ホームセキュリティの通信回線についてよくあるご質問セコム株式会社https://www.secom.co.jp/homesecurity/support/faq/kaisen.html
令和6年能登半島地震の対応について(停電対応)経済産業省https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/pdf/020_01_01.pdf
日本初の”ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか資源エネルギー庁https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html
JRC蘇生ガイドライン2020日本蘇生協議会https://www.jrc-cpr.org/jrc-guideline-2020/
令和5年版 救急救助の現況総務省消防庁https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/post-5.html
家庭でできる停電対策セコム防犯・防災ブログhttps://www.secom.co.jp/homesecurity/bouhan/bosai_bouka/bouhan065.html

本記事はguard-structureが防犯・安全設計に関する情報提供を目的として制作しました。医療・法的アドバイスを提供するものではありません。緊急時は直ちに119番・110番へご連絡ください。

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大切な家族と資産を守るために、「何が起こり得るのか」「何を備えるべきか」を考え、学術論文や公的データをもとに情報を整理しています。 筆者は防犯の専門家ではなく、特定の方法や製品を推奨する立場にもありません。その分、全体像を俯瞰し、防犯や備えを「構造」として捉え、判断の軸をわかりやすく言語化することに重きを置いています。 情報はあくまで判断材料のひとつです。ご自身の環境に合わせた対策を考えるための「設計図」としてご活用ください。最終的な対策については、警備会社などの専門家への相談もあわせてご検討ください。
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